おっさんの初体験。

生まれて初めてヘリコプターに乗った。奇しくも51歳の最終日だった。知らない世界にふれるのはいつだって興奮するものだ。

チャンスが訪れたのは『鈴鹿8耐』の決勝日のことだった。「北村さん、ヘリ乗りません?」と声をかけてくれたのは、鈴鹿8耐の舞台となった鈴鹿サーキットや栃木のツインリンクもてぎを管理する会社の方だ。日頃よりレース普及の仕事をご一緒しているからか、貴重な枠に誘ってくださったのだ。何の迷いもなく「はいっ、乗りたいです」と元気に答えた。発着場に行くとプロペラが回っていて、テレビでよく見かけた光景のとおり、周囲にいる者たちの髪を乱している。刑事モノのドラマの主人公になったような気分で乗り込むと、マイクつきのヘッドフォンを手渡してくれてスタンバイOKだ。「飛びます飛びます」と二郎さんのように言ってほしかったが、んなわけない。

ふわっと浮いた。もっとギクシャクした動きを想像していた。高度を上げていくのも旋回も意外なほど上品な乗り心地だ。どんどん高度が上がり視界が広がる。鈴鹿サーキットのコース上をトレースするように飛んでくれて、バイクはアリンコのようだった。いつもとまったく違う角度でサーキットを俯瞰できたのは気持ちいいったらない。

名ゼリフ「地球は青かった」と比べるとスケールダウンするが、こんなセリフを吐いた。「スプーンはスプーンだった」だ。サーキットを俯瞰した図や写真は何度も見てきたが、実際に空から鈴鹿名物のカーブを見るとまさしくスプーンじゃないか。ガキのようにはしゃぎながら感動しっぱなしの初体験に涙があふれた。

いくつになっても、いやこの歳になったからこそ初体験には貪欲でいくべきだ。今回、浅草秘密基地の常連さんを半ば強引に誘い出した。鈴鹿で初めてバイクレースを見た男は、ホームストレートをハイスピード駆け抜けていくマシンたちに心を揺さぶられ、涙が出たと言っていた。わかる気がする。僕もこの歳で初めてだったら同じだったに違いない。

夏本番はこれからだ。同世代の皆さん、お互いでっかい夏になるように走りましょう。

 

<プロデューサーのつぶやき>

自身が昭和40年生まれでもある初代編集長で、現在はプロデューサーとして活動中の北村が、思ったこと、感じたことを同世代へのメッセージを込めて書き連ねます。(本エントリーは、本誌ブログを再掲載したものです)